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ひみつの飴玉 平岸古本日記

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銀河鉄道の夜(読書会)

12月3日モンクールで読書会を行ないました。
夜7時から9時まで。
当日は平田オリザさんの講演や新さっぽろの青少年科学館でプラネタリウム祭りがあったり、年末の忘年会があってかお客様は3名(一人は松本直人さんで企画の打ち合わせ兼ねて来て頂きました。)おおっと読書会は成立するのか?


夫が宮沢賢治の年表を用意してました。
「銀河鉄道の夜」は初稿から第四稿まで見つかっているのですが、決定稿が無い作品です。
一般的に妹のトシが亡くなったことにより天上の道を描く旅といわれており、そちらについては間違いないかと思います。
一稿は妹のトシが自分の好きな鉄道に乗り、きらきらとした星夜を巡り天国へ召される姿を思い描くことにより、自分に対する癒しを物語にしていたのだろうと思えます。
三稿目は説明的な言い回しをする博士が「幸せの道」とはと説くシーンがあるのですが、賢治自身が教師生活を送っていることに影響を受けて、物語を通して教え子にたいする教育者としての部分があるようです。
四稿になりますと賢治自身がどんどん体調不良に陥り自分自身の死が近づいているのでもしかしたら、自分のこの先の道を想像しながら書いたのかなと思え、三稿の説明的な言い回しが削られています。
近年の「銀河鉄道の夜」は宮沢賢治を研究する学者たちにより「決定稿」みたいなものが確立されているらしく、説明的は部分はいらないとされてます。
幸せは誰かに道しるべになり導いてもらうものではなく、自分で決めて一人で行くのだ。という「春と修羅」にもあるように「おれはひとりの修羅なのだ」と幸せを自分に作りにいくのが正しい解釈かと思えます。
賢治は「地学」に強い学者でした。
夜な夜な一人で天体を観測し、データを残しています。
田舎の岩手・花巻では変人扱いされました。
賢治はそれでも物語を作り、天空や山々、大地やそこを駆け回る動物たち、川の下から水面を想像し、「クラムボン」なんて言葉をつけて感覚的な表現もしました。
詩は詩といわず「心象スケッチ」とオリジナルな言葉とリズムを結びつけ、苦しみながらも楽しんで書いているみたいです。

母の牛乳を取りに行く寄り道から銀河鉄道に乗り、
温かい牛乳を受け取っている時には友と永遠の別れをしている。
銀河は牛乳のような星の光の集まりであり
空には天の川が輝き続けている。

親族の死を経験すると数年は薄ぼんやりとした世界に取り残された気持になって
後悔ばかりしています。
どんなにも尽くしても何かできることはまだまだあったのではないか。
身動きできずに立ち尽くし、見える景色は車窓の景色のようで手を伸ばしたくてもそんな動きのできないほど早く流れゆく時間はまるで鉄道に乗っているような気分になるのです。

何も出来なかったと思うからこそ
美しい世界にいてほしいと願うことしかできない。

悲しい物語ではありますが
様々な人の世界に天上の世界は伝わって行きます。

読む年代によっても読み方は異なってくるので
もう一度、物語を読んであなたも銀河鉄道に乗車してみませんか?

宮沢賢治の亡くなった年を超えて生きてみると
また味わい深いものがあります。

少ない人数でしたが
とても楽しい時間を過ごせました。

また、来年モンクールで読書会を開く予定です。

by kanazuuu | 2016-12-05 21:52 |